葵の残葉 感想

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「葵の残葉」読みました。歴史小説にしては読みやすい物語でした。徳川の血筋として生まれて、各藩で当主についた4人の兄弟の物語ですが、主に、尾張徳川を継いだ慶勝を中心に話が進んでいきます。幕末では日本を変えるために尽力した英雄が多くいますが、この話の中心は、どちらかと言うと時代が変わっていく事に翻弄された脇役のような人物です。脇役といっても、もちろん、四人とも維新に対して何らかの役割を果たしています。しかし、自分たちが主導して時代を動かした立場でないという意味で脇役という言葉を使ってみました。

激動の時代に上手く立ち回れていない事に対しての、登場人物の内面的な描写なんかは現代小説を読んでいる感じもしなくもないかなと感じました。殿様という現代では存在しない立場の人物の心理描写は歴史小説という感じもして、現代小説と歴史小説を一緒に読んでいるような少し不思議な感覚がありますが、その不思議な感じが読みやすさに繋がっているような気もします。

この小説で一番好きな場面は結末ですね。私はバッドエンドはあまり好きではないんです😅最後はみんな上手くいくみたいな、ハッピーエンドの王道みたいな終わり方が好きなんですが、この物語はいわゆるハッピーエンドの王道的な終わり方ではないと思います。4人とも辛い思いをしたが、最後はそれを乗り越えていこうとしているみたいな前向きなところと、昔、親戚のおじさんが集まるとこんな感じだったなと少しなつかしさを感じるところが、なんか好きですね。

 

個人的には、4兄弟は徳川の遠い親戚みたいな感じなのですがそれを「葵の末葉」と表現している所はかっこいいなと思ってしまいました。歴史小説は言い回しが現代では使わないような表現をしているのですが、それがすごくかっこよかったりするので、それも歴史小説の魅力の一つかなと思います。